The Doppler Quarterly (日本語) 秋 2016 | Page 34

2. エクスペリエンスデザインを重視する 世界中のすべての革新的な考えを集めても、質の低いユーザーエクスペリエンスを提供する ソリューションを救うことはできません。優れたユーザーエクスペリエンスは導入成功の原動 力となるだけではなく、高級な価格設定や価値の実現につながります (Apple、 Nest、および Tesla は、よく知られている 3 つの例です )。 エクスペリエンスデザイン (XD) は魅力的なユーザーインターフェイスの設計をはるかに超え るものであり、中核となる価値要件およびその他の考慮事項よりも、とりわけユーザーのニー ズに重点を置いた基本的なアプローチです。市場に参入しているいずれの企業も、 「自社の ユーザーが何を必要としているかを最もよく理解し、それをエンジニアリングチームの機能と して提供できるのは、自分たちである」と思いがちです。XD では、機能要件および UI 要件 の優先順位付けの頂点にあるのは、製品チームではなくユーザーです。 顧客の痛みや喜びを理解することが優先事項であり、それなしでは、ユーザーが本当に必要 としているものを作り上げることはできません。ソリューションを市場に投入し、ユーザーの手 に届けるための、実用最小限の製品 (MVP) への着手に関しては、多くのことを述べてきまし た。ユーザー中心ではない MVP 計画や、エクスペリエンスデザイン主導のアプローチは、最 初から失敗する運命にあります。 多くの場合、エクスペリエンスデザインは UI 開発を背景とするものとして考えられがちであり、 プロジェクトチームの「役割」 に割り当てられます。XD はエクスペリエンスデザイナーが円滑 化できますが、これは設計チームのすべてのメンバーの仕事であるため、役割というよりは、 デジタルイノベーション提供のプロセスであり、以下に説明する規範的モデルに従います。 ビジョニングと観念化 まず、イノベーションイニシアチブにより解決しようとしている問題が何であるかを理解しやす くするため、問題の分野を定義します。次に、以降の 6 か月、 2 年、および 5 年の間に自社と 顧客が何を達成することを望んでいるか、また、イニシアチブが失敗する可能性の原因につ いて理解します。最初のステップは、サービスを提供しようとしている顧客について十分に理 解し、説明することです。 • 顧客の特定 • 顧客が日常的に、このソリューションに関連するどのようなことを行っているか。また、顧 客が直面している課題は何であるか。 共感 次のステップは、作業や目標を完了するうえで伴う各ステップを含む顧客ジャーニーマップを 作成します。その際には、アプリケーションの内外の両方において、顧客が直面している問題 について理解することが重要となります。 • うまく機能したことは何であったか。また、改善できる点として何があるか。 • ユーザーエクスペリエンスの評価基準を定義する。 32 | THE DOPPLER | 2016 年秋号