The Doppler Quarterly (日本語) 春 2018 | Page 39

新天地を切り開き続けている AI の研究は、 HPE の スーパーコンピューティングによって さらに大きな進歩を遂げました。 AI の背景 人工知能 (AI) は、マシンによって示されるインテリジェンスとして広く定義されており、ディー プラーニング (DL) と呼ばれる AI の一分野は、ここ数年で大きく注目されるようになりまし た。DL ( または深層学習 ) は機械学習の一部であり、人間の大脳新皮質の機能を模したも のです。大脳新皮質は、知覚、運動指令、空間認識、言語、認知といった複雑な脳の機能に 関わる脳の一部です。 2014 年に Google 社が買収した DeepMind 社という企業は、 Google 社がアクセスできる 膨大なデータを活用して、 DL の分野で数多くの成果を残してきました。なお、 DL のアルゴリ ズムは従来、膨大なデータを取り込むことで「学習」してきましたが、ここで説明するように、 DL は新たな方法で学習するようになり始めています。 つい最近では、カーネギーメロン大学の Tuomas Sandholm 教授とその教え子の大学院 生のチームが HPE のスーパーコンピューティングハードウェアを使用して大きな成果を上げ ました。 まず、この 20 年強の間に起きた 3 つの大きな進歩を紹介するとともに、それぞれで使用さ れたアプローチの概要を説明し、将来この新しいテクノロジーをどのように活用できるのかに ついて、いくつかの素晴らしい可能性を考察します。 最初の大きな進歩 まずは、 Deep Blue と呼ばれるシステムが AI プログラムとして世界で初めてチェスの世界 チャンピオンに勝利した、 1996 ∼ 1997 年を振り返ってみましょう。このシステムは当初、カー ネギーメロン大学の Feng-hsiung Hsu 氏によって開発されましたが、同氏が同じチームの メンバーである Thomas Anantharaman 氏と Murray Campbell 氏とともに IBM 社に入 社した後に完成しました。チェスのボードは 8 x 8 マスと比較的小さい一方、ゲームのどの時 点でも多くの指し手が可能ですが、当時の IBM 社のハードウェアに搭載されていた強力な コンピューティング性能によって問題が解決されました。そのシステムは、 1 秒間に 2 億手を 読むことができました。 基本的なアプローチとしては、多数のパラメーターを持つ一般化アルゴリズムを作成した後、 システムで何十万ものマスターとグランドマスターの対局を分析することにより、これらのパラ 2018 年春号 | THE DOPPLER | 37