The Doppler Quarterly (日本語) 春 2016 | Page 8

企業は、コスト節減だけでなく クラウドの推進によりアジリティを高め、 市場投入までの時間を短縮することができます。 いることや、運用中にこれらの環境を適切に管理する方法 などが挙げられます。 また、クラウドプロバイダーが請け合う ROI と、企業が実 現する実際の ROI にはいくつかの相違点があります。この 理由は、クラウドが人件費に与える影響、組織体制の変更 にかかるコスト、クラウドへの移行中にクラウドと非クラウ ドの両方のシステムを運用する必要性について、経験や理 解が不十分なためです。 それでも、パブリッククラウドとプライベートクラウドが普及 する見通しは、急激な上昇曲線を示しています。この新し い業界は問題点の解決に向けて取り組んでいることが見 てとれ、成功例は失敗例を上回っています。 ほとんどの企業は、長い学習曲線をたどる必要がありま す。1990 年代に起こった Web への移行と似ていますが、 クラウドコンピューティングは、さらに広範囲にわたってあ らゆる分野に及びます。クラウドの導入が真の価値を発揮 するまでに、少なくとも 10 年はかかるでしょう。 その他の推進要因 クラウドコンピューティングの第 2 の波を推進するその他 の要因は、このテクノロジーで可能になるユースケースやア プリケーションです。たとえば、モノのインターネット (IoT) は、センサーからデータを受信して、ほぼリアルタイムで処 理することができます。プラットフォームの要件から、 IoT はクラウドに最適なアプリケーションの 1 つになります。食 品の製造業者は、灌漑や生産の工程について有益な情報 を得られるクラウドベースの IoT アプリケーションを求め ています。これは、クラウドのコスト節減によって IoT アプ リケーションの開発と稼働が費用対効果の高い提案とな る 1 つの例にすぎません。 このようなイノベーションはクラウドプロバイダーでも有効 であり、 Google、 Microsoft、 AWSはいずれも、パブリック クラウド内で IoT サービスを提供しています。実際に、 2017 年末までに少なくともクラウドアプリケーションの 25% で IoT アプリケーションがサポートされるでしょう。あらゆる ものを互いに接続することがさらに期待されるようになり、 6 | THE DOPPLER | 2016 年春号 クラウドによって、そのような取り組みのコストが現実的な レベルになります。携帯電話からサーモスタットに至るま で、デバイスメーカーは、すべての機能やストレージがデバ イス自体に備わっている必要はないことを早くから認識し ており、実際にほとんどのスマートIoT デバイスは独自のク ラウドに接続されています。 たとえば、 Nest 社では、自社のサーモスタットのデータを 独自のクラウドに保存し、 DropCam IoT デバイス向けに クラウドストレージサービスの販売も行っています。ほとん どのモバイルアプリケーションのバックエンドにはクラウド サービスがあり、そのサービスは通常、別のパブリッククラ ウド上で実行されています。クラウドサービスがなければ、 これらのデバイスは価値を失いかねません。そうでなくて も、はるかに高いコストがかかるようになり、現在のような 100 ドルを下回る価格にはならないでしょう。 開発者は、クラウドプラットフォーム専用のアプリケー ションも作成しています。このようなアプリケーション は、 「 クラウドネイティブ」と呼 ばれ、自動スケーリン グや自動プロビジョニング、ネイティブ API でアクセ ス可能なその 他の機 能など、プラットフォームのネイ ティブ 機 能を活用しています。クラウドプラットフォー ム向けに作 成され たクラウドネ イティブ アプリケー ションは、非ネイティブアプリケーションよりも優れた パフォーマンスを発揮します。さらに、運 用中のコスト も節 減 することが でき、より優れた監 視 機 能 や 管 理 機能を備えています。 クラウドコンピューティングの第 2 の波は、他の転換点より もはるかに大きな変革です。クラウドサービスは、エンター プライズのインフラストラクチャやアプリケーション (IoT、 モバイルコンピューティングなど ) を含め、あらゆるものに 影響を与えるようになっています。成功の となるのは、 クラウドコンピューティングが、費用対効果の最も高いソ リューションに至るまでの最適なアプローチをどのように 示すかということです。現時点では、クラウドコンピューティ ングに重大な問題は見つかっていません。そのような問題 が明らかにならない限り、急速に発展し続けるでしょう。