The Doppler Quarterly (日本語) 夏 2016 | Page 76

AWS、 Google、およびAzure上の ハイパフォーマンスコンピューティング Joey Jablonski 2009 年に、私はクラウドで実行されるハイパフォーマン スコンピューティング (HPC) のワークロードの信頼性に疑 問を投げかけるブログを書きました。その当時、パブリッ ククラウドのテクノロジーは HPC 環境で見られるタイプの ワークロードやコミュニケーションパターンに対応していま せんでしたが、2009 年以降大きな発展を遂げ、今日では、 HPC のワークロードを実行するのに必要とされるクラウド のテクノロジーだけでなく、そうしたワークロードの実行で 成功を収めている企業の実例も多く存在します。 たとえば、Broad Institute は、Google Cloud と HPC を 使用して大規模なゲノム情報を処理し、ガン、糖尿病、精 神疾患といった数多くの病気の科学研究を加速させていま す。 また、自動テスト機器を設計および製造するグローバルな 企業は、集積回路の設計の信頼性を確保するとともに、 回路が予定通りに納品されるよう、クラウドベースの HPC を使用してオンプレミスのリソースを補完しています。 この他にも、あるグローバルな金融サービス企業は、ポー トフォリオ分析、リスクモデリング、およびコンプライアンス アクティビティにクラウドの HPC のリソースを活用して、規 制の変更に対応しています。 Electronic Design Automation (EDA) や共有メモリの問 題など、現在でもクラウドで高い効率やパフォーマンスを 実現できていない特定の HPC ワークロードのカテゴリはあ りますが、ゲノミクス、地理空間、レンダリング、画像分 析などの多くのワークロードは、パブリッククラウドで実行 されています。AWS 社、Microsoft 社 (Azure)、Google 社といった主要なクラウドベンダーは、ワークロードを簡単 に移行、管理、拡張できるようにすることを目指して投資 74 | THE DOPPLER | 2016年夏号 を行ってきましたが、こうしたベンダーは、 HPC 環境をデー タセンターからクラウドへとスムーズに拡張することで開発 者やユーザーの混乱を最小限に抑える機能を提供する、 Cycle Computing 社や Univa 社のような企業の力を借り てきました。 HPC のコミュニティがより高度なテクノロジーを導入し続け る中、クラウドでは今後、HPC のワークロードが増加の一 途をたどるものと思われます。このようにワークロードが増 加しつつある領域としては、これまでデータセンターでアプ リケーションを実行してきたものの、現在では、アプリケー ションを最適化して柔軟な環境で実行できるようにするこ とに資金を投じているアプリケーションベンダーが挙げら れ、EDA の分野で業界をリードする Cadence 社は、クラ ウドで効率的に実行可能なソフトウェアの評価とそうしたソ フトウェアへの投資を続けています。 大部分の HPC 環境では、並行ファイルシステムが重要な 要素となりますが、Lustre でこの分野をリードするインテ ル社は、クラウドで Lustre を適切に機能させるとともに、 ユーザーがテンプレートを使用して簡単に Lustre を展開 できるようにするための開発とチューニングに資金を投じ続 けています。 ( 不可能ではないにしても ) クラウドで実行することが難し い、Cray 社や Mellanox 社の特殊なハードウェアと接続 を必要とする HPC のワークロードは、今後も存在し続ける と思われますが、クラウドで簡単に実行してシームレスに 拡張できるその他のワークロードには、クラウドを活用して いくべきです。また拡張、テクノロジー移行、および機能 の面で HPC 環境を評価するにあたっては、組織の柔軟性 と拡張性を向上させることができる、クラウドの新たなイノ ベーションや機能に着目することが重要です。