Garuda Indonesia Colours Magazine October 2017 | Page 177

Sumba | スンバ島の奇跡 175 た。 スンバ島には観光客向けのホテルが一握り ほどしかないが、 ニヒワトゥは世界有数の高級リ ゾートにランク付けされている。裸足で過ごす贅 沢な時間を満喫していると、 スンバのカウボーイ 達が活躍した戦争の時代がはるか遠い歴史に 感じられる。 しかしニヒワトゥ周辺はかつて、好戦的なルア族 と、 同じく恐れ知らずのランボヤ族との緩衝地帯 だった。 「スンバ島に平和が訪れたのは、 比較的最近の ことです」 と、前日の朝にニヒワトゥの母屋の藁 葺屋根の下で話をしていたとき、 ダト・ダクが教 えてくれた。 「まさにこのビーチで、 200人以上 の人々が刀と槍で戦っていた頃を私は記憶して います。確執は現在も続いていて、祖父の時代に 始まった言い争いのために、特定の村々には足 を踏み入れない人々もまだいるのです。」 クロードとペトラのグレイヴス夫妻がこの美しい 湾に心を奪われた当初から、 ダト・ダクは何十年 にもわたりニヒワトゥで働いてきた。夫妻がニヒ ワトゥを作ったときは、 比較的質素なサーファー のたまり場として始まり、 オッキーズ・レフト (オー ストラリアの伝説的サーファー、 マーク・オッキル ーポにちなんで命名された) として知られる有名 な波が目玉になっていた。 スンバ 島の 奇跡 バリ島の約2倍の大きさでありながら、 スンバ島 は観光客にほとんど知られていない。 そんなイン ドネシアのロスト・ワールドをマーク・エヴェリー が訪れ、手付かずの自然が残る景色と、世界有 数の魅力的な民族文化を誇るコミュニティを発 見する旅に出た。 深い窪みの中で穏やかに蒸気を出しながら、 広 大な森が丘を覆い、 その端にはカーブを描く白 砂のビーチに沿ってヤシの木が並んでいる。 これ 以上平穏な景色など、考えられないくらいだ。 スンバ島の南岸は、夜が明けたばかりだ。馬に乗 った数人が森から出てきて、 それほど遠くない昔 に戦場であった浜辺に姿を現わした。 スンバのカ ウボーイ達は、 インドネシアの南にあるこの島が 騎馬の戦士と恐ろしい首狩り族の住む土地であ ったことを思い出させる。 私は伝説的なニヒワトゥ・リゾートのスイートル ームのベランダから、 馬に乗った男達を眺めてい それから30年近く経った現在、 ニヒワトゥはエ コロッジとして世界トップ5に入るまでになった。 500人に及ぶ雇用を生み出し、地域の安定に も大きく貢献している。 ニヒワトゥではルア族とラ ンボヤ族の人々が一緒になって働き、 もはや誰 も思い出せないほど昔から散発的に争いを続け てきた二つの民族間に友好関係を (そして時とし て長く続くロマンスまで) もたらす最初のきっか けとなったのだった。 ニヒワトゥのトレッキングガイドと会うために、私 は早起きをした。 タイガーという珍しい名前の若 者が、近隣のワイホラ村まで案内してくれること になっていたのだ。広大な水田―今でも水牛の 群れを走り回らせるというシンプルな方法で耕 されている―を横切って進みながら、 タイガーは 自分の住む島について話をしてくれた。 スンバ島に住む人々の大部分は名目上キリスト 教徒とされているが、 マラプという土着の宗教が 今でも主流となっている。 「僕はキリスト教徒で すが、 それでもたとえば、 ニワトリの内臓で未来 を占うことができると信じています」 とタイガー は言う。私達は途中で喉の渇きを癒すために休 憩を取った。 タイガーが高いヤシの木からココナ ッツの実をとってきて、常に腰に付けているサッ シュから刀を抜いて開けてくれた。 「霊的なことを