Garuda Indonesia Colours Magazine October 2014 | Page 221

Tana Toraja | タナ・トラジャ 219 星の人々 文:ポール・ウォルターズ ボルネオとパプアニューギニアの間に、世界で11番目に大きい島がある。奇 妙な形をしたスラウェシ島には、他に類を見ない独自の文化を持つ様々な民 族が暮らしている。 この島の形を見て、高い天井から落ちてきた巨大な 蜘蛛を連想する人もいる。 サファイアブルーのジャワ 海、 フローレス海、 モルッカ海、 セレベス海にぎこちな く足を広げ、端から端まで2千キロメートル以上も伸 ばした触手を海がやさしく撫でているかのよう だ。 2200万人が住むスラウェシ島は、他に類を見な い独自の文化を持つ人々が暮らす民族のるつぼだ。 かつて気性の荒い船乗りの部族が、頑丈な柵を作っ てヨーロッパの香辛料商人が上陸するのを徹底的に 阻んでいたことで、秘められた島の宝が外国人によっ て発見されるまでには長い時間がかかった。 そのため山に囲まれた内陸部は20世紀に入るまで比 較的未開拓のまま残っており、 その頃になって初めて トラジャ族(「高地の人々」 という意味) が世界に姿を 現わしたのだった。 近隣のどの民族とも異なる彼らの出現によって、人類 学者の間でいくつもの相反する学説が生まれ、 その議 論は現在でも盛んに行われている。 しかし、 どこから来たのかという問いに対してトラジャ 族の人々はこう答えている―「人類の記憶が始まる前 に、我々の祖先は宇宙船に乗ってプレアデスから下り てきたのです」 (ローレンス&ローン・ブレア著『Ring Of Fire』) 私達のタナ・トラジャへの旅は州都マカッサルから始 まった。 マカッサルは島の南端にあり、 その歴史は街 に漂う空気と同じく豊かなものだ。 ここではブギやペラフと呼ばれる、世界に現存してい る中で最も大きな帆船が定期航行している。今でも 何千フィート ( 数百メートル) もの帆布が巨大な船を 動かし、海を渡って無事に港へ帰っているのだ。 マカッサルは、高地へ向かう旅のスタート地点として 最適だ。街中の曲がりくねった小道や活気と色にあふ れた市場を探検するため、一泊する価値が充分にあ る。 タナ・トラジャまでの道のりは長いが、道中にも見るべ きものはたくさんある。 北へ向かうハイウェイはほとん どが真っ直ぐな道で、 スラウェシ南部の平原に広がる 豊かな稲田と海岸線に沿って進んでゆく。 1月から4月まで続く雨季の間には、遠くにそびえ立 つ山々のふもとで稲田が青々とした緑の絨毯に変わ る。 ピンランの町へ着くと、私達は東に向きを変えて、 そこ から457メートル上にあるタナ・トラジャの豊かな渓 谷を目指して登り始めた。 霧の立ち込めた緑の渓谷には透明な川が交差し、 エ メラルド色の水田が黄金の竹で縁取られた山の側面 にカサガイのように隣接している。 そしてはるか下に は、尖塔のある古風な教会が見える。 すると何の前触 れもなく、 トラジャ族の伝統家屋の様式で建てられた 巨大な門が現われ、私達を迎えてくれた。遂に 「トラジ ャランド」 に到着したのだ。 この街は二つの行政の中 心地と 「首都」 に分かれている。最も南にあるのがマカ レだが、私達の8時間にわたる旅の終点はそこから3 1キロ北にあるランテパオだった。