Garuda Indonesia Colours Magazine October 2013 | Page 232

230 Rinca | リンカ Rinca | リンカ ここにドラゴン在り 文/写真:マーク・エヴェリー コモド島と言えばコモドドラゴン (コモドオオトカゲ) で世界的に有名だ 在り!」というミステリアスな警告の言葉を地図に書き記していた。一部 が、 その隣にあるリンカ島を訪れる観光客はほとんどいない。近年最もドラ の専門家によると、 この小さな群島には数えきれないほど多くのドラゴン伝 マチックな捕食動物の生息地として注目されるこの地をマーク・エヴェリー 説があり、 それが後に中国の神話となったのだという。 が取材した。 サンディエゴ動物園による最近の研究で、390k㎡のコモド島全体に約 怒ったように荒れ狂う雲が、岩だらけの島に暗い影を落としている。 遠くに 2,800頭のオオトカゲが生息し、 そのうち2,500頭が小さなリンカ島に集 見えるサバンナに覆われた丘は、東南アジアの熱帯地方というよりアフリカ まり、島の面積のほぼ半分を占めていることが明らかになった。 のサファリによく似た景色だ。私達の乗った小さなボートは鏡のような海面 に波を立てながら、薄暗い岩礁を横切っていく。 パック・イスマエルは、 カンポン・リンカという文字通りドラゴンに包囲され た小さな漁村でレンジャー部隊の隊長を務めている。薪を集めたり野生の ドラゴンの島へと少しずつ近付いていくにつれて、緊張の入り混じった期待 果物を採集したりするために村の外へ出るのは危険なことで、3人かそれ 感が募る。 以上のグループで武器を持って出かけるというのでない限り、 その危険を 冒す村民はほとんどいない。夜が明けると、私はオオトカゲの攻撃から身を コモド群島は昔から暗黒の神話と恐ろしい伝説の場所として知られてき 守る武器として先の割れた棍棒を持った3人のレンジャーと共に村を離れ た。 ヨーロッパの探検家達はこの近辺の海を渡った後、「ここにドラゴン た。 「この辺りで、 ここ4ヵ月の間に非常に攻撃的 そう考えると、 比較的小さなオオトカゲでも甘く な 『mbau』 に5人が襲われました」 とパック・イ 見てはいけない。私はパック・イスマエルの後ろ スマエルは言う。「mbau」 は世界で最も巨大 にぴったりとついて歩き、後ろにはほかのレンジ なオオトカゲを表わす地元の言葉だ。 ャー達がついてくれた。 コモドオオトカゲがライオンやトラ、 ヒョウなど 古いことわざに、 ドラゴンが自分を襲ってくる姿 と比べても最強の捕食動物として恐れられてい を見ることはないというのがある。 そしてこの るのは、 まったく人間を怖がる気配もなく、 自分 朝、彼らは不安になるほどまったく姿を見せな より大きな獲物にも容赦なく襲いかかるから かった。実際のところ、今にも獲物を仕留めよう だ。専門家によれば、 コモドオオトカゲがここま とするそのときまで姿を隠している性質がある で巨大な体(これまでに見つかった最大のもの のだ。私達が歩いていた2時間ほどの間、 オオト は体長3.13メートルで体重が166キロだっ カゲに最も近づいたのは餌食となった爬虫類の た) に進化したのは、 かつてこの島に生息してい 巨大な頭蓋骨を見たときだった。(オオトカゲ たピグミー・エレファント (小型の象だが、象であ のアゴはバッファローのひづめや腿の骨をかみ ることに変わりはない) を狩っていたのが理由だ 砕けるほど強い。)すると突然、谷の向こうか と考えられるという。確かな事実としては、 オオ ら木の倒れる音がした―モンスーンの後で根が トカゲは獲物を待ち伏せして突然襲いかかり、 緩んでいたのだろう。 サルが金切り声を出し、野 小さなコモドオオトカゲからシカや野生の馬、丘 鶏が鳴き声を上げ、辺りに棲むあらゆる生物が を歩く巨大なバッファローまでどんな動物でも 身を守ろうと動き出したようだった。 すぐに私は 捕食することが知られている。 そして多くの場 もっと大きな音が後ろから迫ってきているのに 合、噛みつ