Garuda Indonesia Colours Magazine March 2019 | Page 166

164 Sebangau | セバンアウ  森のキャビンで一夜を過ごした後、私達はカ ヌーに乗って小川の探検に出掛け、 黒い水の湖 のひとつを訪れてみることにした。嬉しいことに、 途中でテングザルの群れを見つけた。水の上を 静かに進みながら、 かなり近くまで行くことがで きた。 この大きくて騒々しいサルの一族が驚くほ ど離れた木々の間を飛び回り、折れやすい枝の 間をいともたやすくスイングしていくのをしばら く眺めていた。  ボートの漕ぎ手とおしゃべりをする中で、森林 保護区の全域にわたる村々の住民の多くが世界 自然保護基金(WWF) による教育を受けている という話を聞いた。彼自身カルインという近隣の 小さな村で生まれたのだという。 「私はWWFに 関わるようになって8年になります」 と、彼は誇ら しげに話してくれた。 「WWFから、移行準備とし て一時的に国立公園局を引き渡されているの で、現在は公園の管理やすべての職務が私達地 元民のコミュニティにまかされています。皆喜ん で働いていて、科学的データの記録や野生の移 住動物の追跡、 その他様々な森での活動の監視 などの経験をより多く積んでいけるように、交代 で仕事をしています。私達の未来のためにエコツ ーリズムを始めたのは、 それが持続可能なやり 方だからです」  日が暮れるまでに、私達はスピリット・オブ・カ リマンタン号に戻った。翌日もカティンガン川を 上る旅を続け、 ゆっくりと動く船のペースにまた すぐに順応した私達は、 のんびりしながら川岸の そばに生えた様々な種類のシダを眺めたり、美 しいサイチョウが上空を横切るのを見て驚いた りしていた。  翌朝、私達を乗せた船は近隣のバウン・バンゴ という、国立公園の端にあるダヤク族の村に停 泊した。陸へ上がるとすぐに、私達を迎え入れて くれることになっていたダヤク族のアルウィさん を探しに出た。村の主要道路はひとつしかなく、 五感―視覚 オランウータン 野生のオランウータンに近付くと、 いつも心臓が 止まりそうになる。 この大きくておとなしい赤褐 色のサルは、人類に最も近い生き物のひとつだ。 実際、DNAの98パーセントが人類と一致してお り、高度な知能と発達した推論能力を持ってい る。人間の赤ちゃんと同じように、 オランウータン の赤ちゃんは泣いてべそをかくことができ、母親 をやさしく、 まるで微笑んでいるかのような顔で 見つめている光景は実に愛らしい。