Garuda Indonesia Colours Magazine March 2019 - Page 165

Sebangau | セバンアウ 163 しれません。 オランウータンはもう高い木の上の 巣にいる頃でしょう。 でも、 ニシメガネザルやオオ コウモリは見られるかもしれません」。彼が続け て説明してくれたところによると、 インドネシア領 ボルネオ島の中部カリマンタンにあるこの公園 には、 5,300平方キロメートルにも及ぶ泥炭湿 原の森が広がり、他にも116種の鳥や166種の 植物を含む様々な種類の野生生物が生息してい るという。  私達は黙ったまま歩き続けた。 ガイドが森の 中の様子に注意を払い、私達にはわからない昆 虫の言葉や、 ヘビや鳥の存在を知らせる木の葉 の擦れる音に耳をそばだてているのがわかった。  彼は時折ささやき声で、壺型の袋が付いてい ることからウツボカズラと呼ばれる食虫植物とい った、 あまりなじみのない森の生物についても教 えてくれた。 この植物に虫が捕まると、補虫嚢の 底にある粘り気のある分泌液で消化吸収されて しまうのだそうだ。  途中で彼が立ち止まり、私達に向かって北の 方へ耳をすますように合図した。 はるか遠くにか すかな音が聞こえ、 ブタオザルの鳴き声だと教え てくれた。 それを聞き分けることができる彼の能 力には驚嘆するしかない。 そのまま耳を傾けてい ると、彼が嬉しそうに近くの木のはるか上の方を 指差した。 そこに見えたのは、林冠に登っていく オランウータンの姿だった。 大自然の 中へ:セ バンアウ 文/ステファニー・ブルックス 写真/デヴィッド・メトカルフ インドネシア領ボルネオ島のカリマンタンにあ り、地球上最大のオランウータンの生息地であ るセバンアウは、 川から探険するのが最高だ。 ス テファニー・ブルックスがエキゾチックな旅に出 た。 セバンアウ国立公園でのトレッキングは、 夕暮れ 時に始まった。 つまずいて細い遊歩道の両側に 広がる真っ黒な水の沼に落ちないように、 トーチ をしっかりと持つ私を、泥炭湿原の土の香りが 出迎えてくれた。 ウンピョウの生息地にいること をはっきりと意識していた私はガイドにぴったり とくっついて歩いた。 「声を立てず、足元に気を付 けてください」 と彼は言った。 「足元の板がいつ割 れてもおかしくありません。 でもご心配なく、私が 助けますから」  数分後、私達は遊歩道から少し離れたところ にある巨大な木にたどり着いた。 「ここは、私達の チームが夜行性動物を記録するスポットのひと つです」 と、小さなグループの私達にガイドが小 声で説明してくれた。 「ウンピョウは人に近寄らな い動物ですが、運が良ければ今夜見られるかも  さらに進むと、 鼻の長いテングザルの甲高い鳴 き声が聞こえた。 「恐らくテングザルの母親が、 夜 になったので家族を呼び戻している声でしょう」 と、 ガイドが説明してくれた。 それを合図に、私達 もまた仮の住まいへと戻ることにした。今夜は国 立公園のキャビンに宿泊するのだ。私達はそこ で地元の人々の手料理をたっぷり食べた後、 虫 の大合唱と鳥の奇妙な鳴き声を聞きながら眠り についた。  国立公園の中にあるこの人里離れた場所に は、一般に中央ボルネオとして知られる中部カリ マンタンの州都パランカラヤから行くことができ る。  私達はパランカラヤ空港からエアコンの効い た快適なヴァンに乗り、 4時間かけてカヤハン川 にあるジャハンジャンの港に到着し、 セバンアウ へ向かうスピリット・オブ・カリマンタン号に乗船 して水上での3泊の旅に出た。 スピリット号は美 しく改装された伝統的なカリマンタンの屋形船 で、 中部カリマンタンに移住して20年以上にな るオーストラリア人のゲイ・サヴィシンと、 ビジネ ス・パートナーのローナ・ドーソン=コリンズが 運営するWOWボルネオの船団に属している。