Garuda Indonesia Colours Magazine February 2015 | Page 202

200 Alor | アロール島 アロール島 文/写真:センディ・アディティア・サプトゥラ 小スンダ列島の東端に位置し、魅力的な島々の集まるアロール諸 島。最大の島であるアロール島を旅し、 この小さな諸島が誇る多 種多様な生物と文化の魅力を探る。 「アロールは実に美しい―私達が心して楽しみさえすれば」 冒頭の言葉は、 かつてアロールの県知事を務めてい たアンス・タカラペタ氏のものだ。 この言葉が頭から 離れずにいた私は、 アロール島のマリ空港に着陸し ながらその意味について考えていた。 滑走路に近付い ていくと、緑が生い茂り、起伏の多い景色と、 ノコギリ の歯のような山頂の連なりが見えてくる。 ここはもと もと火山だった島で、 内陸部の険しい地形にその名 残が表われている。 しかも島の周りには魅力的な砂 浜もいくつか見え、早く足先を埋めてみたくてたまら なくなる。 空港から車で30分のところに、 カラバヒという小さな 町がある。 私はその町のペランギ・インダ (美しい虹) と名付けられた、 小さなホテルに一泊することにした。 翌朝4時に起きて、近くにあるマリ・ビーチへ日の出を 見に出かけた。 すでに地元の漁師が港に集まってお り、仕掛けの準備に追われている。 そのそばでは新鮮 な果物や魚介類を並べる屋台の準備も始まってい た。 ロング・ブラック・コーヒーを飲みながら空を眺め ていると、空の色が青みがかった燃えるような赤か ら、 ほんのりピンク色をしたオレンジイエローへと変 わってゆくのが見える―新しい発見が待ち構える一 日に、 ふさわしい幕開けだ。 内陸部へ向かう前に、私はセリブ・モコ博物館に立ち 寄った。 ペランギ・インダ・ホテルの向かい側にあり、 午前7時から開いているこの博物館には1000に及 ぶ 「モコ」 (儀式で使う銅鼓) が集められている。 ここで 見られる鼓は何百年も前に作られたもので、小さいな がらも見逃せない博物館だ―入場料が一人につき1 ドル (約117円) というのも嬉しい。 モコは花婿から 花嫁への贈りものとされた伝統があり、刻まれたモチ ーフによって他の儀式で使われることもあった。 モコ の様々な模様を見比べたり、手織りの絣布(イカット) をはじめ、古くから伝わる楽器や刀、陶器といった数 々の種類の民芸品を眺めたりしていると、 あっという 間に時間が経ってしまう。 アロール島は、小スンダ列島の東端に位置するアロ ール諸島最大の島だ。 8つの言語と52の方言を話す 100を超える民族が住み、 158の村々からなる1 7の小区域に分かれている。 そしてここは20の島が 集まる小さな諸島でありながら、 インドネシアで最も 文化の多様性に富む地域となっている。諸島に住む 18万5千人の人々は、近年までお互いから隔離され た生活をしていた。道路やインフラ整備も整っていな かったため、何世紀にも渡って外の世界からも遮断さ れていた。 沿岸部には、 オランダ植民地時代にラジャ (村の王) が置かれていた。 しかし内陸部には入るのが不可能 に近かったためオランダの影響がほとんどなく、現在 でもいくつもの部族の間で先住民のアニミズム崇拝 が続いている。 そして幸いなことに、常に補修工事が 行われているものの、近年になって新しく道路が作ら れて島内の移動が可能になったおかげで、高地に住 む部族にも会いに行けるようになった。 この島の道を車で走るには、経験を積んだ運転手を 雇った方が良い。 内陸へと続いて行く道は、厳しいス イッチバック、縁が崩れそうな崖、狭い粘土の道、深い